アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
26日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ スーダン統治評議会議長、評議会と内閣を解散すると発表し、非常事態を宣言。首相や政府高官らを拘束。市民的不服従が呼びかけられ、抗議参加者が死傷
■ 米、スーダンに文民政府の回復を呼びかけ、7億ドルの援助を停止。露、「外国の介入に責任がある」と声明。国連、スーダン軍部の措置に懸念表明
■ アフリカ連合、スーダンに拘束者解放と対話への回帰を求める。サウジアラビアは自制を呼びかけ、カタールは政治プロセス再開を求める。エジプトは「国の高次の利益を優先することの重要性」を強調
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―レバノン首都で今月14日に起きた銃撃戦の捜査で、政府に委任された軍事裁判所の判事は、拘束中の18人を含む68人を起訴した。「殺人」「宗派的不和の扇動」等の容疑。事件当事者「レバノン軍団(LF)」のジャアジャア党首の聴取が必要かは、今後判断する。
―シリア国営通信は、「イスラエル軍が25日未明、シリア南部を新たに攻撃した」と報じた。ただ、この空爆の内容や被害状況には触れず。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―アラウィUAE空軍司令官が、イスラエルでの軍事演習に(オブザーバーとして)参加するためテルアビブに到着した。「歴史的訪問だ」としている。演習には米英仏伊、ギリシャなどが参加する。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンのナイーム報道官は、「EUのアフガンでの任務再開は、他の多くの国の大使館のそれと同様、前向きかつ適切な一歩で、歓迎する」「EU公館と職員の安全を提供する」とツイート。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダン情勢
・スーダン軍部は25日未明から、ハムドゥーク首相と妻、他の閣僚、軍政に反対する政治家ら多数を相次ぎ拘束し、連行した。拘束場所は不明。以下、詳細:
軍と迅速支援部隊(RSF)の合同部隊が首相宅に押し入り、首相と妻を連行。「首相は、軍の行動を支持する声明を出すよう強く迫られたが、拒否したため拘束された」とされる。
イブラヒム・シェイフ産業相も拘束(連行時の写真を娘が公開)。バッルール情報相は、「連行時、着替える時間も与えられなかった」(側近)。ハスバ・ラスール通信相、オマル内閣担当相も拘束された。閣僚以外では、暫定統治評議会(TSC)の文民委員ムハンマド・スライマン氏(TSC報道官)、職能者連合のムハンマド・アサンム代表、社会主義アラブ復興党のサンフーリ党首、首相のアルマーン政策補佐官、サーレハ広報補佐官、ニムル・ハルツーム知事ら複数の知事が拘束、連行された。
・上記後、ブルハーンTSC議長はTV中継された演説で、TSCと内閣を解散すると発表。非常事態を宣言し、憲法宣言文書(暫定憲法)の一部を停止するとした。また、「前バシール政権解体」委員会を停止し、その職務遂行の仕方と委員構成を見直すと表明。ブルハーン氏は演説で、「政治勢力が治安・経済・社会的側面に関心を払わず、権力や地域・民族ごとの連携を追求したことが、12月革命の目的を守る措置を軍部にとらせた」「移行期の正統性は、選挙に向けた軍人・文民間の合意に基づいていたが、その合意は覆り、国を深刻な分断に至らせ、安全と領土を脅かした」と述べた。
・ブルハーン氏が効力停止を宣言した憲法宣言の条項は次の通り:
11条 TSCは国家元首として、国の主権と一体性を代表。軍、RSFその他部隊の最高司令官である/12条 TSCは首相を任命し、閣僚や県知事任命を承認する。TSC委員11人のうち5人は文民、他の5人は暫定軍事評会が選ぶ。11人目はFFCと暫定軍事評議会の合意で選ぶ文民とする等/15条 首相による閣僚任命は、自由変革勢力(FFC)が推薦。国防、内務両相のみ軍人が推薦/16条 移行期の閣僚の権限と任務を、紛争停止と平和構築、法律案や予算案、条約の提案等と規定/24条の3 暫定立法評議会の構成を、67%をFFC、33%を非FFC勢力が選ぶと規定。(ブルハーン氏は上記演説で、「政治勢力を代表し、革命を成し遂げた青年たちに参加余地を広げた暫定立法評議会を設ける」と述べた)/71条 憲法宣言の規定は、暫定軍事評議会とFFCが合意した政治文書に基づく/72条 TSC各委員の憲法宣誓をもって、暫定軍事評議会は解散するとの規定
・FFCは、ブルハーン氏の上記措置を「クデーターだ」と拒否。「憲法宣言の一部停止は、スーダンを暫定軍事評議会の統治期に戻すものだ」とし、「民衆革命の成果を守るための市民的不服従とデモ」を呼びかけた。また、エチオピア、南スーダン、アフリカ連合(AU)、アラブ連盟、国際社会に対し、「クーデター拒否を明確に表明し、認めないこと」を呼びかけた。また、拘束された閣僚やTSC委員の解放を要求、「暫定軍事評議会の全員が退任して、権力を文民政府に引き渡す」よう求めた。
・ハルツームの大統領宮殿で内閣退陣などを求めて座り込みを実施していた、FFCの一派「国民憲章」グループの支持者は、ブルハーン氏が発表した措置を歓迎した。「非常事態宣言を受け、26日で座り込みを終了する」としている。
・職能者連合は、「夜間に集結して非常事態を打破する」よう呼びかけた。「ブルハーンは自ら、自身の最後を決定づけた。彼は民衆の怒りに直面せざるを得ない」とし、「抵抗委員会、革命勢力、職能団体、組合、民衆組織に反クーデターの結束と抵抗を呼びかける」としている。
・ハルツームの軍総司令部周辺でのデモ参加者によると、総司令部の塀に近づいた人たちに軍の要員が発砲した。激しい発砲や負傷者の様子が、活動家撮影の映像で確認できる。軍部の決定への抗議は、ハルツームやオムドゥルマンなどで発生。主な通りでバリケードを築き、タイヤを燃やす等し、治安部隊と衝突した。保健省筋は「軍事評議会の銃弾で負傷した市民7人が死亡した」と述べた。負傷者は140人を超える由。軍部の諸部隊が展開し、総司令部に至る道路を閉鎖した。
・情報文化省は、「他の閣僚と共に拉致されたハムドゥーク首相を長とする政府は、依然、正統な暫定政権だ」と声明。「政権の軍部側による一方的な決定・措置には、何ら憲法上の根拠がなく、違法で、処罰対象となる」「憲法宣言文書では、非常事態は首相の権限だ。また、立法評議会以外に暫定機構を解散する権限はない」「首相や全ての高官の即時解放を求める」「欧米や地域諸国が出した、クーデターを非難・拒否するとの力強い立場を歓迎する」とした。
・野党・人民会議党のバドルディン対外関係担当書記は、「起きたことは軍事クーデターだ」とし、全拘束者の即時解放を求めた。
スーダン人の軍事アナリスト、ターレク・シェイフ氏の話(ドーハのスタジオ):過去のクーデターでは常に軍事評議会が設立されてきたが、今回はそれがなく、ブルハーン氏が登場したのみ。自身が長であるTSCを解散するとしたが、それに代わる肩書を示さなかった。「TSC設置に伴い暫定軍事評議会は解散する」との憲法宣言の条項停止を表明はしたが、具体的に軍部のどの勢力がブルハーン氏の今回の行動を支えているのか、不明瞭だ。今後国を運営する主体が明示されていないことは、危険な事態だ。現在、スーダン軍は一人の人物のもとに結束してはいない。軍内の(バシール旧政権の支持基盤だった)「イスラム運動」派は、その有力者の多くが旧政権崩壊後、政治から距離をおく姿勢を示す一方、そうした方針を支持しない者もいる。
・各方面の反応は次の通り:
米国務省は、7億ドルの対スーダン支援停止を表明、「武力による文民政府の変更は、米スーダン関係を危険に晒す」とし、拘束者の即時解放を軍部に呼びかけた。在ハルツーム米大使館は、軍部による「民主化プロセスを破壊する措置」を批判。
EU外交安全保障上級代表 移行プロセスへの復帰を、その参加勢力および地域諸国に呼びかける/仏大統領 クーデターの試みを非難し、移行政府を支持すると表明/英外務省 ハルツームや他地域で状況悪化の危険が増している/独外務省 クーデターの試みを早急に終わらせる必要がある
露外務省は、「スーダンの出来事は、同国の過去2年の政策失敗に伴う政治・経済の深刻な危機を示した」と指摘。「移行政権は多くの国民の絶望を無視した」「内政への外国の広範な介入は、政権への国民の信頼失墜、抗議頻発につながった」とした。
国連事務局長は、スーダンでクーデターが続いていることを強く非難し、首相らの即時解放を呼びかけた。また、「憲法宣言を順守し、政治的移行を維持すべきだ」「軍民の対立は対話と交渉で解消する必要がある」と述べた。
カタール外務省 「政治プロセスを正しい道に戻し、国民の期待を実現する必要がある」と指摘/サウジアラビア外務省は、「自制を保ち、沈静化させ、エスカレートを避ける」よう呼びかけ/エジプト 「スーダン情勢を注視している。安全と安定の実現が重要だ」と声明/AU 「全ての拘束者の解放と、対話再開を求める」と声明
・米ニュースサイト「アクシオス」は、ブルハーン氏は、フェルトマン米「アフリカの角」地域担当特使とハルツームで会談した際、「政府との緊張が理由で軍が何らかの措置をとる可能性がある」と伝えていたと報道。
エリコの目
―サウジアラビアは26日、「緑の中東」と銘打った地球環境対策要綱を発表する予定であるが、これに先立ちアブドルアジズ・エネルギー相は、同国が今後もエネルギーの輸出に取り組むと同時に石油資源分野における工業化を進める考えを示した。同時に、2030年までに400万トンの水素を生産・輸出する計画であると明らかにした。(アッシャルクルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―ニュース枠の大部分でスーダン情勢を報道。