アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
5日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ ヨルダン政府、「ハムザ王子は、国の安全を脅かす計画実行のために外国の諸方面と調整した」「計画を阻止し、捜査を続けている」と発表
■ アラブや欧米の各国、「ヨルダンが自国の安全と安定を守るためにとった措置」への支持を表明
■ ルネッサンス・ダムをめぐるコンゴでの交渉は、成果なく終了。スーダン、エジプト、エチオピアはそれぞれの立場に拘る
■ アフガン政府とタリバンによる攻撃の応酬で、死傷者。政府は「諸外国に危機解決策を示した」と明かす
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―アラグチ・イラン外務次官は、核合意当事国の会合(6日、ウィーン)への出発を前に、「イランは今会合で、米と直接的にも間接的にも交渉しない」と述べた。外務次官は「合同委員会に参加するのは4+1(米を除く核合意当事国)のみ。制裁解除について技術的に協議する」とし、「イランの要求は明確。米が制裁を解除して合意に復帰することだ」と強調。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―コンゴ民主共和国の首都キンシャサで、ルネッサンス・ダムをめぐるエチオピア、エジプト、スーダンの非公開の閣僚会合が開かれた。AUが仲介・主導したが、会合は成果なく終了。消息筋によると、3国ともダムをめぐる交渉での自国の立場を堅持。スーダン・エジプトは(国連、米、EUを加えた)4者による仲介を改めて求めた。
―シュクリー・エジプト外相は、「政治意思と善意があれば、求められる合意への到達は可能」「キンシャサでの会合は、ナイル川の氾濫(増水)期の前にダムの貯水・運用で合意する最後の機会だ」と指摘。「エジプトは10年間、エチオピアが開発目標を達すると同時に、流域のエジプト、スーダンの権利を守る合意成立のため、交渉してきた」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―ムジャーヒド・タリバン報道官は、「アフガニスタン政府軍の車列を攻撃した。国内各地での政府軍の攻撃に反撃したものだ」と述べた。治安筋によると、カブール西方バグマーンで、政府軍に対する自爆攻撃があり、死傷者が出ている。
―アフガン政府高官によると、ガニ大統領は、諸外国に「政治危機を脱するための行程表」を提示した。2週間内にトルコで開かれる見通しの和平会議の際に発表する。行程表は3段階からなり、①政治的解決と、国際的監視による停戦について合意する、②大統領選挙を実施し、「和平政府」を樹立し、「新たな政治体制の採用」に向けた準備を進める、③憲法の枠組みを構築し、避難民を再統合し、開発を実現する―としている。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―サファディ・ヨルダン外相は4日、前日に国内の有力者らが拘束された事件について説明。拘束した人数は14~16人だとした。以下、会見の要旨:
治安機関は、ハムザ王子(元皇太子)、バーセム・イブラーヒーム・アワダッラー(元王宮府長官、元対サウジ特使)、シャリーフ・ハサン・ビン・ゼイドらの活動・行動を認めた。彼らはヨルダンの治安に触れる計画をしていた/捜査で、外国機関を含む諸方面の干渉、それらとのやり取りが認められた。それは、ヨルダンの治安を揺るがす最適なタイミングをめぐるものだった/治安機関は、ハムザ王子周辺が、在外ヨルダン反体制派を含む外国の諸方面と連絡をとっているのを確認。バーセム・アワダッラーの、外国の諸方面や在外反体制派との繋がりも判明した/ヨルダン軍統合参謀本部議長が3日、ハムザ王子と王子宅で会い、「国の安全と安定を標的とするのに利用される活動や行動」を止めるよう求めたが、王子は応じなかった/「ヨルダンの治安を揺るがす試み」は完全に抑え込まれた。捜査は継続中。法に基づき対応し、結果は透明性をもって扱う。ヨルダンの状況は安定している。
関連レポート要旨:ハムザ王子は過去、現政権の手法を批判したことで、軍での准将の地位を失ったとみられている。また王子はヨルダンの部族有力者を積極的に訪問し、国政運営を批判。王子の名は、在外反体制派によって、SNS上で引用されるようになった/シャリーフ・ハサンは、ヨルダン国民の間では有名な人物ではない。一方、アワダッラーは、国の意思決定に重要な役割を果たしたと噂され、批判を受けていた。彼は、長くアブドラ国王の対サウジ特使を務めたが、解任された/ヨルダン国内の政府、司法、議会のトップは、こぞって国王への支持を表明した。彼らは今事件の詳細への言及を避けたつつ、「不和、扇動」(外相)の芽を摘んだ、との重要なメッセージを発した。
―アウダート・ヨルダン下院議長は、上下両院合同会議で、「ヨルダンは昨日(3日)、安全と安定を侵す試みを断ち切った」とし、「外国のアジェンダを有する者に立ち向かう」よう呼びかけた。また「国王のいう『ヨルダンの政治姿勢に敵対し、苛立つ者たち』に明確なメッセージを送った」と述べた。
―ファーイズ上院議長はアルジャジーラとの会見で、「ヨルダンの安定を脅かし、弄ぶ外国勢力」を非難。「ヨルダンは法治国家であり、何人も法を超越しない。ヨルダンの安定を揺るがす者に対して、国家は全力で立ち向かう」と強調した。
―ヨルダン下院議員で、元弁護士組合長のサーレハ・アルムーティ氏は、アルジャジーラの番組で、「ヨルダンの憲法や法に『安全と安定を揺るがした罪』などというものはない」と述べ、ハムザ王子への捜査を批判。「クーデターとは情報、治安機関や軍との協力で行われるものだが、ハムザ王子はこれらの機関と連絡をとっていない」と話した。
―中東などの近隣諸国は、こぞってヨルダン国王と政府への支持を表明:
サウジアラビア国王、ヨルダン国王との電話で、「ヨルダンが国の安全を守るためにとった全ての措置への完全な支持」を伝達。サウジ皇太子も、ヨルダン国王との電話で、「ヨルダンとの連帯、ヨルダンの治安維持のための措置への支持」を伝えた。サウジ外相は「いかなる状況でもヨルダンを支持し、支える」と声明。
カタール首長、ヨルダン国王との電話で、「ヨルダンがその安全と安定を守るための全ての措置と決定を支持する」と述べる。
エジプト大統領、ヨルダン国王との電話で、「ヨルダンと、アブドラ国王に代表される指導部への完全な連帯と支持」を表明。
UAE大統領官房省、「ヨルダンに全面的に連帯し、アブドラ国王の全決定と措置を支持する」と声明。
パレスチナ大統領、ヨルダン国王に、「ヨルダンが国の安全、安定、一体性を確保するための全ての決定への支持」を伝え、「ヨルダンの安全はパレスチナの高次の利益だ」と強調。
リシュク・ハマース政治局員、「ヨルダンは常にパレスチナ民衆の側に立ち、パレスチナ問題にとっての戦略的な深みとなっている」と指摘。
オマーン、「ヨルダンを全面的に支持し、その安全、主権、安定を確保するための全ての措置を支持する」と声明。
モロッコ国王、ヨルダン国王との電話で、「ヨルダンの安全と安定を保つための全ての措置を支持する」と述べる。
イラク政府、「ヨルダンがその安全と安定を維持し、国民の利益を守るためにとる全行動を支持する」と声明。
レバノン大統領、ヨルダン国王との電話で「ヨルダンに連帯し、ヨルダンの恒常的な安定、安全を望む」と述べる。
英外務省、「ヨルダンでの出来事を注視している」とし、「アブドラ国王への全面的な支持」を表明。
EU、「ヨルダン国王と、その域内での役割を完全に支持」し、「状況を注視している」「強いパートナーシップで結ばれているヨルダンの国民への支援を続ける」と声明。
トルコ外務省、「ヨルダンは中東の和平と安定にとって重要。その安定は、トルコの平和と安定と切り離せない」とし、ヨルダンの国王と政府への支持を表明。
イラン外務省報道官、「ヨルダンの安定と平和、そのイランとの良好な関係は重要」と述べる。
―米紙WSJは、欧米やアラブ諸国の外交官は、ヨルダン政府による(拘束した人物に対する)非難に疑念を示した」「国王打倒の試みがあったとの噂を重視していない」と報道。外交官たちは「軍の人物が、主張されている『陰謀』に関与した証拠はない」「王宮内の緊張はかねてから深刻化していた。ハムザ王子拘束の命令は、喫緊の脅威に対するものではないようだ」と指摘した由。また「ハムザ王子は最近、王制の主要支持勢力である部族を北部アルジュンに訪ね、支持と喝采を受けていた」という。
エリコの目
―親イラン民兵組織は、核合意が復活することで彼らの立場が脅かされることを恐れている。ホウシー派幹部がイランに対し、核合意が(米側によって)実行されない限りウラン濃縮を停止すべきでない、とツイートしたのは、この懸念の表れ。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―国別感染状況(UAE)
PCR検査大国である。人口百万人当たりの検査回数は387万回、すなわちひとりあたり約4回の検査をこれまで実施している。これは、日本の約49倍(日本が少なすぎるのだが)、米国の約3倍である。
感染状況は一日当たり新規感染者数が約2,000人の水準で高止まりしている。4月4日の発表によると、新規感染者数2,113人、新規死亡者数6人であった。
<特記事項・気付きの点>
―ヨルダン情勢を、引き続き重点的に報道。