アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
29日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 米、「シリアの米軍基地がロケット弾で攻撃されたが、被害はなかった」と発表。バイデン大統領は「米軍がイラク・シリア国境地帯で空爆した武装勢力が米軍への攻撃の主体」と発言
■ イスラエル、ガザ地区への攻撃開始以降物資の搬入を数週間阻止した後、カタールが資金を供給した発電所用燃料を運ぶタンクローリーのガザ入りを許可
■エチオピア政府、「人道目的」としてティグレ州での一方的停戦を宣言。反政府勢力は州都メケレ制圧を発表
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―米軍は27日、親イランの武装集団が使用する施設をシリアで2か所、イラクで1か所空爆した。これについてブリンケン米国務長官は、「空爆は自衛のために行われた」「米の反撃が極めて重要で強いメッセージを発することを願う」と述べた。
―米誌フォーリン・ポリシーによると、米国防総省は(上記の)空爆前の数週間、親イランの民兵集団による無人機を使用した米軍に対する攻撃を観測していた。同誌は「空爆は、米軍と同盟勢力への脅威の増大とイラク・シリアでの代理勢力を通じたイランの影響力の拡大を浮き彫りにした」「この空爆によって、バイデン政権とイランの間の核合意復帰に向けたデリケートな交渉が複雑化する可能性がある」としている。
―バイデン米大統領は28日、イスラエルのリブリン大統領を迎えた際、「27日、最近のイラクでの米軍に対する攻撃の主体である、イランの支援を受ける諸集団への空爆実行を指示した」と述べた。
―イラクのカージミー首相率いる国家安全保障評議会(INSC)は、米の空爆を激しく非難した。また、武装勢力は報復を警告した。
―米軍が27日にイラクの武装勢力を空爆した後、シリア駐留米軍がロケット弾で攻撃された。これについてシリアでの有志連合のマロット報道官は、「米軍に対する攻撃による被害はなかった」「防衛措置として、攻撃の発射元に向けて砲撃を行った」とツイートした。これに先立ち、シリアの地元筋は「有志連合の部隊が駐留するデリゾール郊外のオマル油田周辺にロケット弾数発が落下した。発射元はデリゾール郊外にある政権派の民兵集団の拠点だ」「有志連合は反撃として、発射元を数回砲撃した。同地では大きな警戒の動きと緊張の高まりがみられる」と述べていた。デリゾール県のユーフラテス川の北側の地域は「シリア民主軍(SDF)」の支配下にあり、南側の地域はシリア政府軍と親政府の民兵集団の支配下にある。
―米、カナダ、アラブ・欧州諸国等の19か国は共同声明を発し、シリア全土での即時停戦、人道支援物資の障害のない円滑な搬入、シリア憲法委員会への支援、テロとの戦いを新たに呼びかけた。また、「2015年に出された安保理決議2254号は、シリアでの紛争への唯一の解決だ」とした。安保理決議2254号には、シリアでの停戦と政治的移行に関する手順が記載されている。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル当局は、カタールの資金提供を受けた発電所用燃料を積んだトラックがカルム・アブー・サーレム境界検問所経由でガザ地区に入ることを50日以上ぶりに許可した。ウェネスランド中東和平担当特別調整官は、「停戦定着のために行われた努力と措置を歓迎する」「国連は停戦定着とガザ住民への支援のため、全当事者および関係するパートナーらと共に取り組む」と述べた。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―イスラム主義集団専門家のハサン・アブ・ハニーヤ氏(アンマン)の話:イスラム国(IS)は2015年からアフリカで勢力を広げている。2015年に地元のジハード主義集団や「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」に属する集団がISに加わり始めた。ナイジェリア北東部には5千人以上の戦闘員を擁するISの「西アフリカ州」が創設され、(ボコハラムの)シェカウ指導者との対立後に地元集団を壊滅させて、広範な地域を支配するようになった。サヘル地域にもISの州があり、ブルキナファソ、マリ、ニジェール等で大規模な攻撃を実行した。アフリカ東部には「ソマリア州」があり、そこでISはアルカイダ系のアルシャバブと連携している。コンゴ民主共和国とモザンビークを含む地域には、最近「中央アフリカ州」が創設された。最近2か月にISはモザンビーク北部カーボ・デルガド州の広い地域を支配している。
有志連合はアフリカでのISの勢力拡大を理解しているが、これらの地域を活動対象に含んでいない。対IS有志連合の9割を占める米の関心がイラクとシリアに向いているのは明らかだ。米のアフリカでの活動は弱い。仏軍もマリでのクーデターの後、5千人以上を派兵したバルカン作戦を停止している。28日にローマで開かれた有志連合の会議では、アフリカ大陸でのISの台頭に対する作戦実行のためのシステム等の決定は出ないだろう。
○ マグレブ情勢
―クビシュ国連リビア特使は、ジュネーブで開かれた「リビア政治対話フォーラム」の新たなラウンドの場で、「リビア議会は安保理に委任されたにもかかわらず、12月24日実施予定の大統領・議会選挙のための憲法上の根拠を明確にできなかった。リビア議会はその責任に見合うレベルに達しておらず、期待されていることを行っていない」と述べ、「さらなる遅延の余地はない。選挙の憲法上の根拠に関する中間的な解決策への到達は、来月初めまでの行程表の目標実現のために極めて重要だ」と強調した。
―カタール国営通信によると、同国のムハンマド外相はローマでの有志連合の会議に出席した際にリビアのマングーシュ外相と会談し、「カタールはリビアの主権・統一・安定を全面的に支持する」「リビアでの選挙の準備が上手く行くよう願う」と伝えた。また、サウジ国営通信も、同国のファイサル外相がリビア外相と会談したと報じた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―エチオピア政府は、「ティグレ州暫定政府の要請を受けて、同州で一方的停戦を行うことに同意した」と発表した。政府は同州を支配していた「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」を排除した後、暫定政府を任命していた。
―TPLF広報担当は、数か月にわたる政府軍との戦いの末にティグレ州の州都メケレでの支配を回復したと発表した。
―ユニセフは、「政府軍は人道に関する国際法、および国連機関が攻撃を免れる権利を侵し、ティグレ州のユニセフ事務所を攻撃した」と非難し、「ユニセフの活動の優先事項は、攻撃の危険と飢餓に直面している14万人の子供を支援することだ」と訴えかけた。
エリコの目
―イエメンの反政府組織フーシ派は、サウジアラビアのナジュラーン、アブハ、キング・ハーリド空軍基地(ハミース・マシート)に対し、弾道ミサイル5基、自爆ドローン5機による攻撃を実施し、成功したと発表した。一方サウジ軍は、弾道ミサイル2基、ドローン3機を迎撃したとしている。今月19日以来、フーシ派は連日サウジ南部への同様の攻撃を実施しており、撃墜されたドローンの数はサウジ側発表で39機に上っている。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―UAE当局は、最近の国内の新型コロナ感染は、より感染力の強い変異株によるものであり、その結果、死者数が増加していると発表した。同国ではワクチン接種対象者の91.8%、人口の71%がワクチン接種を終えてい る。当局によると、集中治療室によるケアが必要となった患者の92%、死亡した人の94%はワクチン未接種者であった。同国の新規感染者数は、年初に記録したピークである4000人超えまでは至っていないが、ここ1か月2,000人台の高い水準で漸増傾向にある。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし