アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
9日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ ルネッサンス・ダムの危機をめぐる国連安保理の会合で、仏・英・中・露が「対立解消に最適な場はAUだ」と確認。エジプトは「AU主導の交渉は行き詰まった」と述べる
■ 米大統領、「アフガニスタンで戦闘が激化する中、米はアフガン政府軍部隊を信頼している」と述べる。政府軍は軍事作戦を開始し、タリバンは新たな拠点を制圧
■ イラクの有志連合軍、アイン・アル・アサド基地やアルビール空港に対する攻撃の後、米大使館が新たに攻撃されたことを受け、イラク国家諸機関の崩壊を警告。イラク武装勢力諸派は「米大使館は戦闘の標的には含まれていない」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラクのバグダッド中心部グリーン・ゾーンにある米大使館が、8日未明、ロケット弾攻撃を受け、これに対して大使館の防衛システムが応射した。グリーン・ゾーン内では警報が鳴り響いた。武装勢力諸派に近いメディアによると、攻撃はロケット弾と爆発物を取り付けた無人機によるもので、ロケット弾はバグダッドのラサーファ地区から発射された。米国防総省の消息筋は、「攻撃されたとの情報は知っているが、詳細は不明だ」と述べた。
―ハズアリ「アサーイブ・アフル・ハック(AAH)」書記長(リーダー)は、「グリーン・ゾーン内の米大使館はこれまで、イラクにおける米のプレゼンスを攻撃する戦闘の標的に含まれていない」「もし米大使館を標的に含めると決定したなら、命中しないカチューシャ・ロケット弾を使用せず、より正確に命中する兵器を使うだろう」と述べた。イラク政府を含む国内の政治諸派は武装勢力諸派と、米大使館の建物を攻撃の標的としないことを盛り込んだ合意を締結している。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―国連安保理はルネッサンス・ダムの危機をめぐる会合を開始。会合の中継中の各国代表による主な発言は以下の通り。
シュクリ・エジプト外相:ルネッサンス・ダムはエジプトと国民を脅かしており、その貯水量が増える度に我々の命にとってより大きな脅威となる/ナイル川を支配しないよう警告し、関係諸国の利益に配慮するよう求める/エチオピアの一方的な決定は、エジプトとスーダンが受ける損害に同国が無関心であることを示している/エチオピアの姿勢は、不誠実さと既成事実の強要(の意図)を反映している/エチオピアの振舞いによって、エジプトは国連安保理の早急かつ有効的な介入を要請せざるを得なかった/エチオピアの持続的なエネルギー生産を許容する、法的拘束力のある合意成立に向けて取り組んでいる/同ダムに関するいかなる合意も、3か国の権利を保障するものであるべきだ/合意に至らない原因は、エチオピアの頑固な姿勢だ/同ダムをめぐる危機の根幹は政治的なものだ/あらゆる合意成立に向けた試みを台無しにするエチオピアの姿勢を遺憾に思う/青ナイル川を活用するエチオピアの権利に反対しているのではなく、国際公約の順守を求めている/エチオピアはあらゆる紛争解決の規定を考慮することを拒否した/エチオピアによる妨害によって、我々は巨大な同ダムによる悪影響についての中立的な科学的調書を所有していない/AUが主導する取り組みは行き詰まった/エジプト人1億人とスーダン人5千万人が同ダムによる危険の下で暮らしている/エジプトは同ダムによって1200億㎥の水を失うことになる/我々は国連安保理に、当事諸国に解決を強いることを求めてはいない。決議案の目的は交渉の再開だ/我々は国連安保理にチュニジアが配布した決議案の採択を求める。
マハディ・スーダン外相:3か国の権利が守られるとして、我々は当初、同ダムの建設を支持していた/同ダムの貯水に関する合意がなければ、ダムの利点はスーダン・エジプト両国の人口の半数にとっての危険となる/スーダンの国民の安全・各ダムの安全・戦略的安全保障を守るために必要な合意の重要性を強調する/同ダムによって、スーダンの氾濫原は50%縮小することになる/エチオピアは以前にも単独で措置を講じ、多くのスーダン国民に損害を与えた/同ダムの貯水の方法に関する情報が提供されなければ、ロセイレス・ダム(ルネッサンス・ダムから百kmの距離にある)の安全は危険に晒される/我々の農業力に打撃を与えようとする意図は極めて危険であり、我々の農業復興の未来を脅かす/国連安保理はエチオピアに対し、一方的な措置を講じないよう求めるべきであり、AU主導の交渉における国際的な代表者らに対してより大きな役割を与えるべきである。
シレシ・エチオピア灌漑相:今日(8日)、国連安保理の会合で発電のためのダムの稼働について精査することは、前例のない事である/同ダムは適切な場所にあり、その目的は地域住民の生活の改善だ/同ダムの計画は、エチオピア国民の夢の実現とその生活の必要性に応えようとしたものだ/エチオピアには多くの水を蓄えられる物はなく、同ダムに代わる物はない/兄弟である2か国が同ダムの問題を国連安保理の議題として提案したことは遺憾だ/エジプトとスーダンによる反対は、我々が自国の水資源を利用するのを阻止することが狙いであるとの結論を出さざるを得ない/我々は圧力に屈しない。AUが交渉を主導すべきだ/同ダムの貯水は、エジプトとスーダンとの合意に基づいて行われる予定だ/スーダンにとっての同ダムは、エジプトにとってのアスワン・(ハイ・)ダムであり、脅威とはならない/もし国連安保理がエジプトとスーダンの要求を認めたら、他の国々の間の同様の紛争(の解決)が滞ることになるだろう/ナイル川の水は我々皆にとって十分な量であり、解決は国連安保理を通じてでは不可能であると認識すべきだ。
その他の発言:国連アフリカ大陸担当特使「ルネッサンス・ダム問題の当事諸国に協力を求め、緊張を高めるいかなる発言もしないよう求める」/国連環境計画(UNEP)代表「危機当事諸国間の合意は可能だ」「同ダムに関する合意成立は不可欠であり、対立の克服には全員がそれを望むことが必要だ」/AU代表「エジプト、スーダン、エチオピア間の不信の壁を打ち砕き、解決に到達する可能性を我々は保障すべきだ」/チュニジア代表「3か国の水の権利を守る、同ダムに関する拘束力のある合意を支持する」/英代表「同ダムをめぐる交渉を崩壊させるような措置を講じないよう当事3か国に促している」/ケニア代表「AU主導の下、交渉の席に戻るよう当事諸国に求める」/露代表「同ダムの危機における威嚇的な発言が増していることを懸念している」「同ダムをめぐる交渉の仲介者の数を増やすことは何ら価値がない」/米代表「アフリカ大陸の安定と同ダムをめぐる対立の解消の支援にコミットしている」「AUがダム問題を解消するために(仲介役として)最も適役であると保証する」「AU主導の交渉再開のために、3か国とともに取り組んでいる」/中国代表「AUによる仲介を支持し、友好国である3か国に対話を呼びかける」「当事諸国は対話や交渉を通じて対立を解消すべきだ」/仏代表「対立が国家安全保障の脅威にならないようにすることが国連安保理の責任だ」「交渉を崩壊させるいかなる措置も講じないよう、当事諸国に求める」「AU主導の下で速やかに解決に至ることができると確信している」。
―アビー・エチオピア首相はツイッターで、「同ダムはエチオピアの発展の大望であり、自立の象徴だ」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンの治安筋によると、タリバンが南部ザーブル州シャフル・サファ郡の庁舎を制圧。一方、タリバンのラグマン州知事が東部で政府軍の攻撃により負傷した。これより前、アフガン国防省は、「西部のバードギース州で政府軍が実施した掃討作戦において、タリバン戦闘員69人が死亡した」「増援部隊が治安確保のため、同州に到着した」と発表した。
―ラブロフ露外相は、「タリバンはより敵対的な振舞いをするようになった」「移行政府の樹立や独立した国家機構の設置を謳った合意は、まだ実行されていない。この責任はアフガン政府にある」「アフガンの政府高官らは、移行プロセスによって失脚するのではないかと危惧している」と述べた。また、「アフガン北部などにできている『飛び地や空白地帯』は、政治プロセスが滞り、敵対行為が再開された結果である」と指摘し、「それによってIS戦闘員の影響力が強まるだろう」と警告した。
―ジョンソン英首相は、「英軍司令官は、『アフガンでの国家崩壊と内戦の勃発は外国軍の撤退と共に起こり得ることとなった』と述べた」「大半の英国軍部隊はアフガンからの撤退を完了し、アフガンのパートナーたちのための新たな活動に従事する予定だ」「現在、状況は大きく変わり、訓練キャンプは破壊され、アルカイダのリーダーの残党はアフガンにはいない。そして2001年以来、アフガンから欧米諸国を標的としたテロ攻撃は行われていない」と述べた。
―米とトルコと間のアフガンに関する協議が8日に再開され、オースティン国防長官はアカル・トルコ国防相と電話で会談。カブールのハーミド・カルザイ国際空港の安全な操業をめぐる合意を目的とした両国の技術代表団による会合の進捗状況について協議した。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―レバノンのヒズボラのカーシム副書記長はインタビューに答え、「抵抗枢軸(ヒズボラ)は、過去15年の間、イスラエルの攻撃からレバノンを守る『抑止の均衡』を実現した」と述べたほか、「『エルサレムの剣』戦争(最近のガザ・エルサレム紛争)が突然始まったことにイスラエルは動揺した。エルサレムはかつてなく近くなった」などと述べた。(アルマヤディーン・ネット)
中東の新型コロナ動向
―モンゼリWHO東地中海事務所所長(パキスタンを含むMENA地域担当)が記者会見で述べた要旨:
・当地域の新型コロナ感染は、2カ月間の減少傾向の後、再び増加しており、その原因のひとつ、デルタ型変異株が13カ国で検出。
・国境を開き、経済活動を活発にしたままで感染は抑えたいという国が闘っている。
・変異株の流行、国際旅客移動の活発化により、今夏は感染が急増する懸念がある。
・変異株流行は、新型ワクチン接種に対抗するかの如く急拡大している。当地域のワクチン接種は不完全、不公平であり、少なくとも人口の40%をカバーするまでにはなお5億回の接種が必要だが、現状この目標ははるか彼方にある。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―ルネッサンス・ダムの危機をめぐる国連安保理会合での各国代表の発言をNYから中継して報道内容が変更されたため、ヘッドラインのニュースは別の時間帯のニュースからも採取した。