アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
27日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ アルジャジーラ、チュニジア治安部隊による事務所突入と業務停止処分を非難し、妨害や威嚇をせずに記者らを活動させるよう求める。国連は不快感を表し、アルジャジーラの記者らへの嫌がらせを終わらせるよう要請。国際アムネスティは「報道の自由への不当な攻撃」と非難]
■ チュニジア大統領、「私の取った措置はクーデターではない」「議会で国家元首である私への攻撃が見られた」と主張。ミシーシー氏は新首相に委任された人物に権限を渡すと約束。チュニジア労働総同盟は大統領の措置に憲法上の保障を求める
■ チュニジア議会議長、大統領の諸決定を「クーデター」と評す。軍は同議長と両副議長、議員らの議事堂入りを阻止
■ 米・イラク戦略対話の会議が終了。イラク駐留米軍の戦闘任務を年末までに終了させることで合意
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―バイデン米大統領とカージミー・イラク首相は、ホワイトハウスでの両国の戦略対話会議の終わりに共同声明を発した。それによると、イラク側は対IS有志連合の構成員らへの保護を約束した。バイデン大統領は、「イラク駐留米軍は年末までに戦闘任務を終える」と発表。
―イラクの人民結集機構は、「ナジャフ県にあるイマーム・アリー戦闘部隊の軍装備や車両の倉庫が無人機によって2度空爆され、大きな火災が発生。これにより、要員3人が負傷した」「火災のため複数のロケット弾が倉庫から飛び出し、住宅地に着弾して物的被害が出た。学校に落ちた1発は不発だった」と発表した。一方、同国の治安広報局は、火災が起こった現場で無人機は観測されなかったとし、「劣悪な保存状態や気温上昇の結果、爆発が発生した可能性がある」とした。
―アウン・レバノン大統領は、議会と協議して過半数の政治会派の賛同(118中72票)を得た上でミーカーティー元首相に組閣を委任した。自由愛国運動、レバノン軍団の2会派、および無所属の議員らは賛同せず。ミーカーティー氏は、国を危機から救える政府を樹立する自信を示した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―チュニジア大統領府は、26日から1か月を期限として、19時から6時までの夜間外出禁止令を発した。また、国・地方自治体の公的機関を20日と21日の2日間休みとした。
―チュニジアのサイード大統領は、「私の取った措置(首相解任、議会停止等)はクーデターではなく憲法を尊重した措置であり、国の状況が理不尽な域に達した後に取ったものだ」「議会は、その中で国家元首を含む各方面に対して罵詈雑言を浴びせる様子が見られるという、国民にとって屈辱的な状況に達した」と述べた。また、国民に対し、理性を働かせて「混乱と流血を呼びかける者ら」に注意するよう呼びかけた。
―サイード大統領に解任されたミシーシー前首相は、「私は妨害的要素や国の状況の複雑さを増す問題の一部にはならない。チュニジアは危機から脱出するため、団結を必要としている」と声明し、大統領が新首相に任命する人物に権限を渡すと約束した。
―チュニジア与党「アンナハダ」のブヘイリー副党首は、議事堂前で抗議を行っている支持者らの前で「議事堂前での大統領の措置に対する抗議行動を停止する」と発表し、「クーデターに対する運動は既に開始した。クーデターを打倒するまで止まることはないだろう」「自由とクーデター計画阻止のための闘いを支持する諸政党や団体の参加の下で、別の抗議行動が今後行われる」と述べた。
―チュニジア議会のガンヌーシ議長は、「大統領の諸決定には法的・憲法上の根拠がない」と述べ、これらの決定を「クーデター」と評して不快感を表した。これに先立ち、軍は「大統領の指示に従い議事堂を閉鎖する」として、同議長と議員数人が議事堂に入るのを阻止した。
―チュニジア労働総同盟(UGTT、同国最大の労働組合)は、大統領の諸決定を受けて、「措置を取る上での憲法の尊重と民主的な流れの保証、国家の安定回復にこだわる必要がある」と声明し、「大統領の決定した例外的な諸措置を規制して、権限拡大・恣意的判断・権力集中を遠ざけるため、憲法上の保障が伴わなければならない」と強調した。また、「軍を政治的駆け引きから遠ざけ、司法の独立を保証すべきだ」と主張し、暴力を一切拒否する姿勢を示した。
―チュニジア大統領の諸決定に対する国外からの反応:EU、チュニジアの全勢力に憲法・国家機関・法の支配の尊重を呼びかけ、平穏を保って暴力を避けるよう求める/仏外務省、「チュニジアで法の支配が尊重され、国家機関が平常に機能する状態に速やかに戻ることを願う」と声明/トルコ外務省、議会停止に対する深い懸念を表明/アラブ連盟事務局長、「チュニジアが現在の混乱した段階を早急に乗り越え、安定と平穏を回復することを望む」と声明/アルジェリア大統領府、「テブン大統領がチュニジア大統領から電話連絡を受け、同国の最新情勢を協議した」と発表/カタール外務省、チュニジアの危機当事者らに対話を呼びかけ/国連事務総長副報道官、「国連はチュニジアの情勢を注視している」として、同国の諸勢力に自制・暴力回避・対話を呼びかけ/米大統領報道官、「米政府はチュニジアでの情勢展開に懸念を抱いている」「米はチュニジアで起こった出来事をクーデターとみなすかどうか、未だ決断していない」と発言。
―アルジャジーラ・メディア・ネットワークは、チュニス事務所がチュニジア治安部隊によって強制捜査を受け、中で働いていたジャーナリストが全員退去させられたことを非難する声明を発した。アルジャジーラはその中で、「事務所への突入は報道の自由全体への攻撃」として、「ジャーナリストらが妨害や威嚇を受けることなく職務を遂行することを許すべきだ」と同国当局に呼びかけた。ハック国連事務総長副報道官は、事件に対する不快感と懸念を表し、「アルジャジーラのジャーナリストらが嫌がらせを受けることなく職務を遂行できるようにすべきだ」と呼びかけた。アムネスティ・インターナショナルも、事件を「報道の自由に対する不当な攻撃」と評し、言論の自由を含む人権の尊重をサイード大統領に呼びかけた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―26日、マルズーキ元チュニジア大統領がアルジャジーラのインタビューに述べた要旨:
・今日は、二つに分断されているチュニジア国民の双方に共に呼び掛けたい。今夜の出来事で喜んでいる組と悲しんでいる組、どちらもひとつの国民であることを忘れてはならない。
・世界には先進国と後進国の2つのクラブがある。後進国では政争を暴力、クーデター、拷問、特殊警察、反政府活動の包囲等で解決しようとする。先進国では憲法と法律、民主的で公正な選挙によって社会の安定を維持しつつ政争に決着がつく。多大な犠牲を伴った先の革命で、チュニジアは先進国のクラブへ仲間入りした。文明国となり、政治的な違いや対立は、平和的な手段で解決が図られていた。
・この状態がおそらく今夜終わってしまった。おそらく、というのは、市民が今夜の出来事(大統領決定)を受け入れないだろうという希望を持っているからだが、この決定で、チュニジアは後ろ向きに大跳躍した。遺憾ながらアラブ諸国のほとんどがそうである後進国のクラブに逆戻りしたのだ。
・今夜起きたことは疑いなくクーデターだ。大統領は公約を破り、自分自身に全権を与えた。独裁である。行政権の長であるだけでなく司法権も掌握するとは信じられないことである。このようなクーデターを容認することはできない。
・この措置を歓迎した人々は、「エンナハダ」に敵対しているのだが、残念ながら、この措置でチュニジアは良くならず、経済的、社会的状態は更に悪化するだろう。私は「エンナハダ」の弁護をしているのではない。あなた方は「エンナハダは終わった」と喜んでいるが(中略)今夜の決定が問題解決の一歩だと考えるのは間違いだ。逆に、転落への第一歩であることに、全てのチュニジア国民に気づいてもらいたい。
・国の機関は法と憲法に従うものであって、個人に従属してはならない。このことを全ての国の機関に呼び掛ける。法と憲法は国民が努力してひとつひとつ作り上げたものだ。
・「エンナハダ」の政策が問題だからと言って、50年後戻りするのか。「エンナハダ」の問題は彼ら自身の問題だ。私は何度も彼らに対し、その政策はあなた方自身を破滅に追いやり、国を破滅させる、と忠告した。問題は「エンナハダ」をどうするかではない。先進国のクラブに残れるか否かである。
・この措置を歓迎した人々は幻想を見ているのである。このやり方で国は良くならない。近いうちにこの間違いが否定され、合法性が回復されたときに、真の解決がある。この試練を、国民はスクラムを組んで乗り越えよう。
中東の新型コロナ動向
―イランでは感染が拡大中で、26日には新規感染者数が31,814人と過去最高を記録し、また、初めて3万人の大台を超えた。24時間以内の死者数は322人。政府高官は、「米国による制裁のため、ワクチンの輸入が困難である」と述べた。人口8300万人の同国でワクチン2回接種を完了した者はわずか240万人に留まっている。(アッシャルク・アルアウサト紙他)
<特記事項・気付きの点>
―チュニジア大統領が議会停止・行政権掌握等を宣言したことを受け、同国情勢に重点を置いて連続報道。