サウジでウクライナ巡り協議

協議主導の背景

 サウジアラビアは8月5、6両日、ウクライナと欧米主要国に加え、インド、ブラジルなどの主要新興国も招き、約30カ国規模のウクライナ和平協議を主催する。政府高官レベルで開かれ、ロシアは招かれないこの会議を通じて、欧米とウクライナは、ウクライナに有利な和平条件への国際的な支持の取り付けを狙っているという。年内にも首脳レベルでの国際和平会議の開催実現を目指しているとされる 。

 サウジなどの新興国・途上国 「グローバルサウス 」は、ロシアのウクライナ侵攻を巡り中立、ともすれば親ロシアの立場をとっている。このことに関しては、繰り返し小稿で指摘した。そのサウジがこのような和平協議を主導する背景は何か。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)へのリークという形で世界に伝えられたこの協議 を陰で主導するのは当然米国だ。ロシアのウクライナ侵攻の今後を占う上でカギとなる、極めて重要な展開だ。

不参加ロシアの反応

 誰もが疑問に思うのは、 もう一方の当事国であるロシアを招かないで、一体何を協議するのかという点だろう。 そう、 これは和平交渉ではな い。 欧米、ウクライナ側が主張する正当性(=ロシアの侵攻の非合法性)を、広く認識させようという 、欧米の側からの 外交努力なのだ。事実、本件を WSJにリークしたとみられる 高官筋は「サウジが選ばれたのは、中国の参加を期待してのこと」と付言したらしい。 侵攻の長期化に伴う 穀物価格の高騰など 途上国への悪影響も強まっており 、ウクライナには追い風かもしれな い。それでも、異論が噴出する展開も予想される 。欧米と「グローバルサウス」の立場には、もともと 明らかな温度差がある。

 また、なぜ サウジが ホスト国を引き受けたのか。 こちらはほとんどミステリーだ。ロシアとの関係を重視する 同国が、ロシアの意向 を確認せず、またはその意向に反してこのようなイニシアティブを取るとは考えにくい。また不思議なことにこの報道 後、ロシアはあからさまな非難や否定的なコメントを出していない。と いうことは、ロシアはこの会合に期待しているということになる。協議で何らかの 解決の筋道が出ることは、侵略の既成事実化を世界に認めさせる好機と 考えているのではないか 。

ウクライナ、米国の思惑

 西側が「勝手に」 期待し てい たウクライナの大攻勢 は起こらなかった。 いや、起こしているが 失敗に終わったのだと ロシアのプーチン大統領はうそぶいている。 西側が どれほど武器と資金を供給しても、ウクライナの若者と肩を組んで、あるいはその代わりに戦う国はない。すべての 占領地を解放するまで戦いをやめないというゼレン スキー大統領のリーダーシップは、着実に戦死者の数を増やし、西側に「支援疲れ」 を育て ている。何事にも潮時というものがある。

 そう考えると、国際会議の決定という お墨付きが欲しいのはゼレンスキー大統領 であり、それ以上に停戦を願っているのが 米国のバイデン大統領 では ないか 。筆者はあるサウジ高官が、「 われわれがロシアともパイプを持つのは、事態を鎮静化させなければ 平和は来ないからだ 」と言うのを聞いたことがある。 「グローバル サウス」の真価が問われる協議 になるかもしれない 。

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