偽装と市場監視(結び)

日本では、ニセ・ブランド品の取り締まりも、食品偽装や悪徳商法の取り締まりも、すべて警察の仕事である。市役所や中央省庁の出先には行政指導する部局はあっても、直接、物品を押収したり、罰金を科したりすることはできない。
しかし、UAEでは、これを市役所や、中央省庁である経済省の出先機関である経済開発局が警察と同じように行っている。私は、この違いは何だろう、と興味が湧いた。この世界の一角に足を踏み入れて、早いもので25年ほども経った。今頃気づくとは。
そういえば初めて、エジプトへ行ったときの新鮮な驚きは今も忘れない。いくつかの「カルチャー・ショック」を経験したが、その中でも本稿と直接関係していることは、「この世界では、商人は常態的に客を騙す」という事実だ。相場の二倍、はたまた十倍、ひどいときには百倍もの値段を吹っかけて平気な顔をしているのは、お土産もの売りの商店主だけでなく、タクシーの運転手もそうだ。青果市場では、腐ったオレンジをきれいなオレンジに混ぜて売ろうとする八百屋と果てしない根気合戦をしたものだ。
アラブの制度は、基本的に性悪説に立っている…。放っておけば、人は必ず騙すのだから、騙さない社会、弱者を守る社会がアッラーの御意思だとして、イスラム法が介入しているのである。
一方、日本はといえば、これは世界に誇ってよいことであろうが、儒教の強い影響か人を騙すことは非常に悪いことと、概して安心である。第一、中世に最も進んだ市場経済を誇った日本の商取引の伝統では、騙すような商人が成功する可能性はない。いわば、日本は性善説だ。それだけに、市場で人を騙すことは犯罪。だから、警察が担当する、ということであろう。
今まではそれでよかったかもしれない。しかし、昨今の偽装大流行の風潮は、日本の社会が明らかに変わって来ていることを示している。偽装を許さない社会を実現するためには、先進のイスラムの制度を取り入れて、農水省や経産省、そして都道府県にも取締官を置き、逮捕、摘発、行政罰の賦課などの権限を与えるべき時が来ていると思う。消費者センターだけで消費者は守れない。

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