【特集】中東の熱い冬

エジプトはどうなるのか(3)
エジプトの「市民革命」は、本当に体制を倒したのか。
これは公式には「倒した」ということになっており、世界がこれを祝福し、そうでないことを口にする人は非国民、という空気がある。
かつて小生が通訳申し上げたムバラク大統領はもはや天下の極悪人に堕ちた。先日、亡くなられた藤原和彦さんと日本記者クラブで講演を聴いた(通訳した)アルアハラーム紙のサラヤ編集長は、旧体制人として追及対照のブラックリストに載っているという。しかし、それではアルアハラーム紙は一転して国民の声を代弁する自由メディアに変身したのだろうか。
12日の紙面はトップに「革命の成功により、カイロ及び各県が歓喜に満ち溢れる」「犠牲者の血によってエジプトの新たな出生証明書が書かれた」という大見出しが躍っている。カイロの赤穂智子さんによると、13日の同新聞は民間紙と同じ市民目線の写真を使って、ビジュアル的にも市民の味方に変わった、と訴えかけているようだという。
これらが本当に変革を示しているのだと考えるべきなのか、それとも、サラヤ氏子飼いの言論人達は、巧みに旧体制の残滓に新たな命を吹き込むタイミングをはかるべく、空虚な言葉を売っているのではあるまいか。
(アラビア語で「カラーム・ファーリグ」という。エジプト人が特によく使う言葉で、「中身のない言葉」。アラブ人、特にエジプト人は、美辞麗句をまくし立てる天才だ。)
軍に権限が委譲される、というのは普通に考えれば「革命失敗」である。
今後、何が起きるだろうか。

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