エジプト第二革命前夜

これは、エジプトの衝突でコプト教徒が大量に殺害される少し前、9月末のアルジャジーラの報道要旨です。
「エジプトでは、政府公共部門の労働者によるストライキが頻発している。要求は労働条件の改善と賃上げ。エジプトでは、旧政権が倒れ、制限が緩くなったため、人々の間にはストライキによって権利を獲得しようという気運が目立っている。
ミドハトというバス運転手は、ストライキを行なっている仲間に合流することにした。車庫に止まったままのバス。ミドハトは25年間も勤めたというのに、月給は百ドル・およそ8000円にも満たない。
ミ『こんな給料で生活しろって、どうやって暮らせというんだ!父と母の面倒もわたしがみている。家賃をはらって、電気代をはらって、水道代はらって、食べ物を買ったら、服を買うお金なんかどこにもない!!』
こんな不満は昔からあった。しかし革命後の今は、経済情勢の悪化に怒る人々の共通した行動はデモとストライキだ。革命による変革に期待を示す声もあれば、逆に変革が起こらないことを批判する声もある。
市民の叫び『エジプトよ目覚めよ。変革していないぞ』
市民の声『革命のあとには自由平等が実現するって約束だったじゃないか。だが自由も社会的平等もなにも実現していない。もう一回革命だ!という声が上がっている』
革命後のエジプト人の気持ちは変化した。彼らを縛っていた治安維持のための厳しい警備がなくなった分、権利の実現を求める人々の要求は、際限なく盛り上がっているのだ。それは時において危険な状況を呈している。
エジプト人専門家『自由を制限されていた国民がある日突然自由だといわれ、でもまだ自由が何であるかを知らない。これは非常に害がある。彼にとっても社会にとっても。自由というのは、何でも好きにできる、ということではないのだ。他人や公共の利益を考えなくてはならない。』
厳しい条件の下での生活を余儀なくされているストライキ参加者には同情を禁じえないが、政府が即効的で十分な解決をもたらすことは考えられない。歴史的な転換点を迎えている今、エジプトは政治的にも経済的にも混乱を続けている。」
このような報道に接していたので、コプト教徒大量殺害の報は驚きというよりはむしろ「やっぱり」という感慨をもって受け止めました。
「革命」前のエジプトがどのような状況にあり、「革命」で何が起きたかを考えれば、現在の混乱もまた当然の帰結です。この不安定さのまま社会を維持していくことは不可能ですので、遠からず、次の大きなうねりが来ることでしょう。それは、人々が秩序を信じ、完全にとまでは言わないものの、まずは「安心して」仕事に行くことのできる社会をつくるための「革命」です。
それは、世俗的な志向の青年たちによるのか、イスラム勢力によるのか、はたまた、「<旧体制の残党>と呼ばれる人々(<軍)」によるものかは確言できません。しかし、私としては最後の可能性が一番大きいのではないか、「革命」は結局失敗し、政権担当能力を持ったエジプト支配階級による政権が国際社会の支持を得て治安能力を回復し、イスラム勢力は(過去ほどではないにしても基本的に)弾圧して、世俗的な政権運営をしていく、ということがエジプト国民にとってもよい選択ではないのか、という風に考えております。
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        デモで経済的困窮を解決できるのだろうか

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