アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
32日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イラン核合意をめぐり7日にウィーンで新たな会合開催へ。イランは「個人・団体に対する制裁解除で一致」と述べる。露は楽観的。欧州は「最も困難な問題が解決していない」と指摘
■ 米代表団、地域問題協議のため中東歴訪を開始。NYタイムズは、新たなイラン・サウジ会談について伝え、サウジ政府の「地域の平和を促進するあらゆる機会を利用する」とのコメントを報道
■ 米がアフガニスタンからの撤退開始を発表した直後、米軍は「カンダハル空港が攻撃未遂に遭った」と発表。タリバンは撤退の遅れをドーハ合意違反とみなし、アフガン政府は攻撃増大を予想
■ スーダン、「エチオピアがルネッサンス・ダム交渉で頑固な態度を取り、既成事実を強要しようとしている」と非難。エチオピア首相は、同ダムの第2回貯水を「国の復活に等しいもの」と見る
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ウィーンで開かれていたイランの核合意をめぐる関係国の次官級会合が終了した。7日に新たな会合を開くことで合意。在ウィーン国際機関代表部のウリヤノフ露常駐代表は、「協議は正しい方向に向かって進んでいる」としながらも、現時点での緊張緩和の可能性は退けた。同代表は、「すべての兆候が、ウィーン協議が数週間中に最終的成果に至るという期待に繋がっている。この成果は前向きなものになると思われる」と述べた。
―アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は、「交渉プロセスは進んでいるが遅い」とした上で、「エネルギー・金融・港湾など一部部門に対する制裁の解除と、制裁対象とされている個人や団体のリストの削除で一致している」と述べた。(関連レポート内での次官の発言では「一部部門に対する制裁は解除されるべきだとの点で一致したが、個人や団体を対象とした制裁の解除についてはまだ交渉が続いている」となっている。)欧州外交筋は、「最も困難な課題がまだ解決していない」と述べた。
―米ニュース・サイト「アクシオス」が事情に詳しい関係筋の話として伝えたところによると、バイデン大統領は30日、ワシントンでイスラエルのコーヘン「モサド」長官と会談し、イランについて協議した。事前に予定されていたものではなく、別の目的で訪米していた同長官との会談が急遽組まれた。ネタニヤフ首相は、この会談の前に同長官にイランに関するメッセージを伝え、会談後にこれを更新したものを受け取った。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―米国務省は、同省と国防総省とNSCの高官からなる代表団が1日、中東歴訪を開始すると発表。7日までの予定で、アブダビとアンマン、カイロ、リヤドを訪問し、各国政府高官と会合する予定。同省の声明によると同代表団は、アブダビでは、地域の諸問題について協議するほか、米・UAE間の戦略的パートナーシップの強化に取り組む。アンマンでは、米・ヨルダン両国が共通の関心を有する地域の諸問題のほか、ヨルダンとの長期パートナーシップの強化について協議。カイロでは、米・エジプト2国間関係や経済協力、地域安全保障のほか、人権問題を取り上げる。リヤドでは、サウジの安全保障に対する米の支援を確認し、イエメン紛争の平和的解決に向けた外交努力について協議、更に人権問題や、経済の近代化・多角化に向けたサウジの取り組み、両国間の気候に関する協力についても話し合う。
―NYタイムズ紙がイランとイラクの当局者らの話として伝えたところによると、フメイダーン・サウジ総合情報庁長官が先月、バグダッドでイランの安全保障担当高官との秘密の協議を開始した。イエメンでの戦争やイランの支援を受けるイラクの民兵組織の問題など、両国間で対立が見られる諸問題が議題となっている。同紙はイラン政府の顧問の話として、「4月9日にフメイダーン長官とイラバニ・イラン国家安全保障最高評議会副事務局長が会談し、バグダッドで5月に更なる協議を行うことで一致した。この協議は恐らく大使級になる」と伝えた。同紙がコメントを求めたところ、サウジ政府は「サウジは、イランが誠意を示し、悪意ある行動を止めることを条件に、地域の平和と安定を促進・強化するためのあらゆる機会をとらえるつもりだ」と回答した。
―イエメン・ダーリア県の消息筋によると、同県内での政府軍とホウシー派の戦闘で同派の戦闘員3人が死亡したほか、軍の兵士2人が死亡、3人が負傷した。同筋によると、政府軍は同県内の複数地域を奪還した。一方、同派のメディアは「同派が同県ファーヘル戦線で政府軍の大規模攻撃を阻止した。この際の戦闘で、同軍の現場指揮官を含む複数が死亡した」と伝えた。
―ホウシー派のメディアは、「サウジ主導の同盟軍がマアリブ県西部サルワーフの複数拠点を24回にわたり空爆した」と伝えた。これ以上の詳細には触れていない。イエメンの軍事関係筋によると1日、サルワーフで政府軍と人民抵抗勢力が攻撃を仕掛け、激しい戦闘となった。軍側は複数の拠点を奪還。軍側の攻撃と同盟軍の空爆により、同派の軍用車少なくとも10台が破壊されたほか、戦闘地域に向かっていた同派の援軍・車両も壊滅した。
○ エジプト情勢
―マハディ・スーダン外相は、ウガンダ外相との協議で「スーダンは、ルネッサンス・ダムをめぐるAU主導でオブザーバーが重要な役割を演じる真剣な交渉メカニズムを支持する」「エチオピアは交渉で頑固な立場をとることで時間を買い、既成事実を強要しようとしている」と述べた。
―アビー・エチオピア首相は、復活祭にあたり「7月にルネッサンス・ダムの第2回貯水を行うことは、キリストの復活のようなエチオピアの復活ととらえられる」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―米は1日、バイデン大統領の命令に従って、アフガニスタンからの米軍の無条件撤退を開始した。米国防総省の優先事項の再設定を目的としたもの。アフガン国防省当局者によると、米軍基地のアフガン政府への引き渡し作業が始まり、同作業を監視する合同委員会が設置された。
―モヒブ・アフガニスタン大統領顧問(国家安全保障担当)は、米軍撤退後のタリバンによる攻撃増大を予想しつつ、「アフガン政府軍が、こうした攻撃を阻止することができる」とし、「タリバンの中にも、戦争の継続に反対する潮流がある」と指摘した。また「タリバンが捕虜となっているメンバーの釈放を望むなら、アフガン政府とだけ交渉すべきだ」と述べた。
―ムジャーヒド・タリバン広報担当は、「米軍のアフガン撤退の遅れは、タリバンとのドーハ合意違反とみなされ、タリバンに外国軍に対する何らかの行動を取る機会を与える」と警告した。
―タリバンは、「中部ガズニ州でアフガン兵23人を拘束した」と発表。地元当局は、兵士の拘束を否定している。
―アフガニスタン駐留米軍報道官は、「米軍が1日夜に空爆を行い、(米軍が駐留するカンダハル)空港を狙っていたミサイル複数を破壊した」と述べた。これより先に、同報道官は「カンダハルの空港が攻撃を受けたが失敗に終わり、被害はなかった」と発表していた。
○ マグレブ情勢
―リビアのシルト・ジュフラ作戦指令室報道官によると、ハフタル元少将派部隊の軍用貨物機が1日昼、シルト空港に着陸した。挙国一致政府から見れば、これは停戦合意に違反する行為だが、ハフタル氏は同合意の順守を正式に約束していない。また、外国人傭兵も国内に存在し続けており、沿岸道路の再開も遅れる中、国内和解の今後に疑問が投げかけられている。
スヌーシー・ブシークリー・リビア研究開発センター所長(トリポリ)の話:(停戦と挙国一致政府を支持することで国際社会は一致しているが)ハフタル氏はこれまでも、ベルリン合意を破るなど何度も国際社会の総意に反してきた。同氏は、リビア問題をめぐる国際・地域諸勢力間の矛盾をついて、先のトリポリ攻撃で失敗した自身の政治的野望を実現する余地を見いだそうとしている。新たな(上記の軍事的)動員策によって圧力をかけて、次期選挙に立候補する道を開こうとしているか、あるいは「カードを切り直す」ために新たな戦線を開こうとしているのかもしれない。立候補については、同氏は米国籍のため資格がなく、大きな「人道に対する罪」に加担していることから欧米が強く反対するだろうが、圧力をかけて道を開こうとしている可能性がある。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―ソマリア国民議会は、4月に可決したファルマジョ大統領の任期を2年延長する決議の取り消しを賛成多数で承認した。同議会によると、同大統領はローブル首相に昨年9月17日の合意に基づいた大統領選・議会選の実施を委任。
エリコの目
―サウジアラビアのムハンマド皇太子がイランとの善隣関係を希望すると発言するとは、誰も予想していなかった。しかし、同皇太子がそのような発言をした背景には、介入後6年が経過した対イエメン戦争が、目的を達するどころか、サウジ国内の安全をも脅かしている現状が最も強く影響しているのではないか。(レバノン人軍事評論家アビナーデル氏の論稿要旨:アルマヤディーン・ネット)
中東の新型コロナ動向
―イラクのシーア派指導者ムクタダ・サドルがこれまでの立場を一転、新型コロナ・ワクチン接種を受けてその模様を映した動画をツイートしたことが大きな波紋を呼んでいる。「同指導者が礼拝を制限したりマスクを着用することに否定的見解を示したことが、アラブ世界最大の感染拡大を招いたというのに」、と非難するツイートが拡散しているのだ。一方、支持者の間ではワクチン接種の希望者が急増した。(アルアラブ紙)
―1日の新規感染者数は5,167人、死者数は33人と、2月以降の感染拡大に歯止めがかかっていない。
<特記事項・気付きの点>
―特になし