アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
7日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ エチオピアがルネッサンス・ダムの貯水開始を通告したことに、米は「緊張を高める」と警告。国連は「一方的行動の回避」を求める。エジプトとスーダン、チュニジアによる安保理決議案を支持
■ レバノン大統領、「カタールがレバノン危機解決のための支援を申し出た」と述べる。カタール外相は、レバノンの当事勢力に「国益を優先する」よう呼びかけ
■ 米、「イランは濃縮度20%の金属ウランを使ってもウィーンの交渉で立場を強化できない」と声明。英独仏は懸念を表明。イランは「研究目的」と説明
■ アフガン政府、「タリバンが制圧した地域の奪還を計画している」と声明。駐留米軍は「撤退の90%が完了した」とし、「武力で権力を握る政府に正統性はない」と指摘。露、紛争当事者に解決を呼びかけ
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラクのクルド地方政府は、アルビール国際空港が6日夜、ロケット弾と爆装無人機の攻撃に晒されたと発表。これに先立ちイラクのメディアは「アルビール国際空港がカチューシャ・ロケット弾で攻撃された」「ロケット弾は米軍が駐留する軍事区域に着弾した」と報じた。一方、有志連合軍は「無人機1機が空港近くに落ちた。損害、死傷者とも出ていない」と発表。
アルビール特派員の話:国際空港内の有志連合軍の基地(米軍も駐留)に対するこの種の攻撃は、昨年から繰り返されている。今回は、イラクのシーア派武装組織「サイイド・ショハダー大隊」による攻撃とみられる。同大隊の書記長は6日に声明で「米軍がイラク・シリア国境地帯で(先月27日に)行ったイラク人民結集部隊(PMF)への空爆に対し、イラクやクルド地方で復讐する」と主張していた。過去の攻撃では、こうした「攻撃予告」のような声明が出たことはなかった。イラクのメディアでは、「今回の攻撃はロケット弾20発、無人機3機によるものだった」との情報も流れた。攻撃を受け、空港に至る道路、空港出入り口は一時、通行が制限された。
―ガリババディ・イランIAEA大使は「9日前、IAEAに濃縮度20%の金属ウランの製造プロセスに着手したと伝えた。テヘランの研究炉の燃料に用いるためだ」「この分野の活動・研究は3か月前から始めている」「この措置は、医療目的のアイソトープ生産に大きく貢献するだろう」と述べた。
―IAEAは、イランが濃縮度20%の金属ウラン製造を始めたのを確認したと報告した。これを受けて英仏独の外相は共同声明を出して強い懸念を表明。「深刻な核合意違反だ」「金属ウランの製造を更に研究・発展させる民生用需要がイランにあるとの信頼に足る情報はない。これは核兵器開発に欠かせない措置で、(核合意の再生を目指す)ウィーン協議の成功を脅かすものだ」と批判。
―米国務省報道官は、「イランは、濃縮度20%の金属ウランを使用するという行動に出ても、ウィーンでの(核合意をめぐる)交渉で立場を強化することはできない」と述べた。
―ムハンマド・カタール外相は、レバノンを訪問し、アウン大統領、組閣を委任されているハリーリー氏、国会議長、軍司令官らと会談した。レバノン大統領府によれば、カタールは「レバノンの危機解決のために支援を提供する用意がある」と申し出た。これに大統領は「いかなる措置も歓迎・感謝する」と応じた由。一方、ディヤーブ職務執行内閣首相は「レバノンは消滅の危機にある」と述べ、組閣を急ぐよう呼びかけた。
―カタール外相は、「レバノンの当事者に対し、国益を優先し、危機に対処する内閣を早急に成立させるよう呼びかける」と述べた。カタールは、レバノン軍に1年間、毎月70トンの食糧を提供すると発表。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―エチオピアがナイル川の上流に建設しているルネッサンス・ダム(GERD)をめぐり、国連安保理でアラブ諸国を代表するチュニジア(非常任理事国)は、安保理決議案を作成、関係国に配布した。これは、ダム問題の当時国(ナイル川下流)のエジプトとスーダンなどの要請を受けた動き。決議案はまず7日に安保理理事国の専門家レベルの会合で議論される。安保理はGERDについての会議を8日に予定。
―チュニジアの決議案は、「エジプト、エチオピア、スーダンに交渉再開を求める」「当事3国に、6か月以内に拘束力ある合意をつくるよう呼びかける」「交渉プロセスを危険に晒す措置を避けるよう呼びかける」「一方的なダムの貯水継続を控えるようエチオピアに促す」としている。
―シュクリー・エジプト外相は、8日のGERDに関する安保理の会議を前に、NYで安保理常任理事国(米英仏の国連大使)と会合。また「露・中の外相とそれぞれ連絡をとった上で、両国国連大使との会合を持った」と明らかにした。エジプト外務省によれば、シュクリー外相は「安保理はGERD問題に責任を負うべきだ」「ダムの貯水・稼働に関して拘束力ある(エチオピア、スーダン、エジプトの)協定が必要との我々の立場は不変だ」と強調した。
―国連事務総長報道官は、GERD問題について「解決の機会を台無しにする一方的措置を避ける」よう呼びかけた。また「国連事務総長は、AUの仲介を支持する」「解決は、公正で妥当かつ大きな損害を引き起こさないものであるべきだ」と述べた。一方、米国務省は「エチオピアによるダムの貯水開始は、緊張を高める」と指摘。
―エチオピアのGERD問題交渉団メンバー、ヤルマ・セリチ氏は、「ダムの貯水と稼働は、2015年の『原則宣言』第5条で同意されている」「エチオピアはダムの貯水と稼働を並行して行う」「貯水はダム建設の一要素で、原則宣言の一部をなす」と主張した。
―エジプトのGERD問題交渉団のメンバー、アーレフ・ガリーブ氏は「原則宣言は、貯水と稼働のルールを記していない」と指摘。「エチオピアは、ダムに関する調査(情報)をエジプトとスーダンに共有していない」と批判した。
―スーダンのトーム元灌漑相は、「GERD問題は、政治的な対応によって、危機が複雑化した」「エジプト、スーダン、エチオピアの各国民が、ダム問題の危機に苦しんでいる」と指摘した。
―サウジ国営通信は、GERD問題へのサウジの立場として、「エジプトとスーダンが水に関する正当な権利を守ることを支持・支援する」「エジプト、スーダン、アラブ世界、アフリカの角地域における水の安全保障の重要性を確認する」「強制力のある解決に向けた国際的な動きを支持し、当時国の交渉開始のための明確な手段を見出す努力を国際社会に呼びかける」と報じた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―各地の戦闘で盛んに使用されている無人機の中でも、AIで制御され、人間の操縦や指示なしに、自ら標的を選んで攻撃を行うタイプの開発が進んでいる。大規模部隊に依らず、この種の無人機数機が戦闘の優位を決める状況も生じている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「イスラエルは、AIで完全制御した『ドローンの群れ』を使用している」と指摘。自律稼働する兵器を「殺人ロボット」を評し、「こうした兵器は、人間の生存や尊厳という基本的権利を脅かす」として、製造停止を求めている。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―タリバンは、アフガン北部バダフシャン州のシュグナン郡(タジキスタンに隣接)を制圧した。「政府軍兵士はタジキスタン側に越境し、軍事装備や弾薬を全て移動させた」という。一方、政府のムヘッブ国家安全保障補佐官は、「北部諸州でタリバンが制圧した地域を奪還する大規模作戦を計画している。多くの地域で住民がタリバンに抵抗し、政府側は14の郡を取り戻した」「政府軍兵士2千人が(タリバンの攻勢で一時退避した)タジキスタンから帰国した」と述べた。
―露のグリノフ駐アフガン大使は、アフガン北部マザリシャリフの領事館について、「職員は残したまま、状況が明確になるまで業務を一時停止する」と述べた。また「アフガンの紛争当事者に交渉と解決を促している。政府とタリバンの交渉が危機を脱する唯一の方法だ」と指摘。露大使によれば、「マザリシャリフ市と郊外は混乱しているが、タリバンはまだ市内を支配していない」とのこと。
―ロディンコ露外務次官は、「必要なら露はタジキスタン・アフガニスタン国境の安全を守るため、追加的な努力をする」「タジキスタンへの追加支援提供は、現地の展開次第だ。タジキスタン駐留露軍基地は、支援提供の準備ができている」と述べた。また「タリバンは対タジキスタン国境の70%を掌握し、非常に緊迫した情勢だ」と語った。
―米中央軍は声明で、アフガン撤退の90%超が完了したと発表。「7つの施設をアフガン国防省に正式に引き渡した」「軍用輸送機984機分、1万7千以上の装備を撤収した。ただ、これらの大半は主要装備ではない」としている。
―パキスタンは、北西部の対アフガン・トルハム国境を閉鎖したと発表。「新型コロナの感染拡大の波を抑えるため」という。パキスタンは、悪化する国内の経済状況から、アフガンからの多数の避難民の受け入れが難しい状況。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―UAEが「OPEC+」会合で協調減産の継続に「独り反対」し、協議がとん挫した。サウジとアブダビの両ムハンマド皇太子間の関係悪化は新たな局面に入った。背景に、中東の二大経済強国の闘いがある。サウジが「フリーゾーンからの輸入制限」「イスラエル産品の輸入禁止」を打ち出したことはUAE経済への打撃を狙った措置。「外国企業はサウジに中東統括事務所を開所しない限り、政府調達から排除される」とのサウジ方針もUAEの利益に逆行。今後、両国の対立が一層激化するのは必至の情勢。(アルクドゥス・アルアラビー紙、アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―エジプトの首相及び保健相は記者会見を開き、「エジプト製」の新型コロナ・ワクチンである「ヴァクセラ・シノヴァック・メイドイン・エジプト」の最初の100万回分が完成した、と発表した。マドブーリ首相は「世界的にワクチンの出荷が遅れており、そのような中で国産工場を確保できたことの意味は大きい」と強調した。また、当初年末までに4000万回分の生産を予定していたが、これを8000万回分に引き上げるため、原料供給の倍増を中国に求めていることも明らかにした。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし