アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
16日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■核合意の当事諸国が参加するウィーンでの交渉が16日にも延長される。イランは「会合は真剣なものだったが、極めて困難だった」と評し、期間の短縮を警告。一方、欧州諸国は交渉の進展を楽観
■米、「悪意ある活動」を理由に露に対して大規模な制裁を科す。露は「米の非難は戯言に過ぎない」として「近々、報復する」と表明し、駐露米大使を召喚。英とポーランドは米の措置に連帯を示すため、露大使を召喚
■ ギリシャ代表団が懸案事項を協議するためにトルコを訪問。ギリシャは「トルコは国際海洋法に違反した」と非難し、トルコは「この発言は受け入れられない」と述べ、緊張が高まる
※バイデン米大統領の対露制裁に関する会見の中継により、「ミッドナイト・ニュース」0600JSTのヘッドラインはなし。
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―アラグチ・イラン外務次官(核問題交渉団長)は、「(ウィーンでの核合意をめぐる)15日の協議は真剣なものだったが、極めて困難だった」「先週の出来事(11日のナタンツの核施設に対する攻撃)が協議に影響した」と述べた。また、ザリーフ・イラン外相は、「バイデン政権は、トランプ前大統領が行った最大限の圧力政策の継続を明らかにしている」と述べた。露の在ウィーン国際機関代表部のウリヤノフ常駐代表は、「核合意をめぐる当事諸国の会合は、前向きだった」と評し、中国代表は、「特に米の対イラン制裁解除について、交渉を加速させるべきだ」と述べた。一方、オーストリア外相は、「協議は危機的な時を迎えており、あらゆる外交努力を注ぐ必要がある」と述べた。
―スタノ欧州委員会報道官はブリュッセルで会見を開き、「ウィーンで開始された協議の目的は、先週始まった合同委員会の作業を完了させることだ。参加者は米の核合意復帰の可能性と全当事者を核合意の完全履行へと促すことについて協議を続けている」「イランが濃縮度60%のウラン製造を発表したことは、核拡散防止の観点からも懸念要因であり、ウィーンで現在行われている協議の精神にも反する。この決定は絶対に正当化できない」「協議は続いており、全当事国に核合意を完全に履行させるべく、我々は尽力している」と述べた。
―米誌「フォーリン・ポリシー」は、ウィーンでの交渉に関係する欧米諸国の情報筋の話として、バイデン米大統領は核合意への復帰を決意しており、マレー米イラン特使はこれを実行するための行程表の作成に取り組んでいる。マレー特使はイランに対し、核合意の再履行を促すため、一部の制裁を緩和するとの取引を提案する可能性があるとのこと。
ウィーン特派員による報告:15日の協議は終了し、十分な成果が得られなかったようで、協議は16日にも延長された。協議後の参加者らの発言は、今日の協議の成功・不成功に関してはっきりしていない。露代表は「前向きだった」との一般的な表現に留まり、アラグチ・イラン外務次官は、「米が解除すべき対イラン制裁とイランが行うべき措置のリストを準備する必要があると、当事諸国は合意した」と述べている。注目すべきは、先週より楽観的な発言が減り、より慎重な発言が目立っており、デリケートな状態であることを皆が認識していることだ。オーストリア外相は、「この会合は最後の会合のチャンスであり、合意成立に失敗すれば、湾岸地域で核軍備戦争が勃発し、その影響が欧州に及ぶ可能性があることを意味する」と述べている。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―グリフィス・国連イエメン特使は国連安保理の会合で、イエメンの最新状況、戦闘、飢餓、感染症などについてブリーフィングを行い、「和平合意の草案は準備できており、紛争当事者の同意を待つのみだ」と述べた。特使は、当事者双方が数千人を拘束していることや、ホウシー派によるタイズ市の包囲を非難した。また、新型コロナウイルスの新たな感染拡大を受けて感染症をめぐる状況の深刻さを警告するとともに、マアリブでの戦闘激化による危機打開への悪影響も警告した。ホウシー派幹部のムハンマド・アリー・ホウシー氏は安保理の会合に先立ち、「イエメンにおける人道危機が終わらなければ、安保理会合は無益であり、不毛である」とツイートした。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―ブリンケン米国務長官はアフガニスタンのカブールを訪問して、ガニ大統領と会談。同長官は会談後の記者会見で「アフガンでの経験によって、同国における紛争の軍事的解決はないと確認された」「タリバンは、武力によって同国を支配しようとしても正当性は得られないと理解すべきだ」と述べた。一方、タリバンは、アフガンからの米軍撤退に関するバイデン米大統領の発言について「不明瞭である」とし、「米によるドーハ合意の不履行は、すなわち、タリバンが報復のための措置を講じることを意味する。責任を負うのは米側だ」と述べた。
―NYタイムズ紙によると、米国防総省は、地域に「穴」ができることを避けるために、タジキスタン、カザフスタン、ウズベキスタンのいずれかの国に、軍を展開させることを検討している。国防総省は軍展開の目的を「アフガンが再び、テロの基地になることを阻止するため」としており、アフガンの近隣諸国に軍を展開させるため、国防総省・CIAと欧州の同盟諸国との間で調整が行われている。一方、米ニュース・サイト「ポリティコ」は、米国防総省の高官らの話として、「アフガンからの撤収は5月1日より前に開始される可能性がある」と報じた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―チャウシオール・トルコ外相はデンディアス・ギリシャ外相とアンカラで共同会見を開き、「ギリシャとの連絡チャンネルを復活させることは、前向きな一歩である」「2国間関係をめぐる協議、東地中海での問題に関する懸案事項の評価を行った」「第3者の手に事態を委ねるまでもなく、直接対話が解決策となるだろう」と述べた。また、「トルコは、EUまたはギリシャに対して、移民問題を利用していない」と述べ、ギリシャ外相によるトルコへの非難を「受け入れられない」とした。
―デンディアス・ギリシャ外相は上記の会見で、「トルコはエーゲ海と東地中海で国際海洋法に反する振舞いをしている」「トルコは、軍用機を400回以上出撃させ、ギリシャの領土の主権を侵害した」と述べた。
―露外務省は、トルコを含むNATOによるウクライナへの武器供給の影響を警告し、「露はトルコに対して、ウクライナの報復の願望を刺激するようなあらゆる措置をやめるよう要請した」「ウクライナへの無人機等の武器の供給は、紛争の平和的解決に資さない」と表明した。
<その他の重要ニュース要旨>
―バイデン米大統領は、米大統領選挙への介入等を理由に、露の個人・企業に対して制裁を科す大統領令を出し、また、駐米露外交官10人の国外追放を発表した。米財務省は「クリミア半島での犯罪を背景に、露の個人・企業に制裁を科す」と発表。
―EUとNATOは、米の対ロ制裁の発表を受け、米への連帯と支持を表明。NATOは、「露はウクライナやジョージアの主権と領土の一体性を侵害し続けていることを含め、安定を揺るがす振舞いを続けている」「米大統領選挙を含む各国の選挙に介入を試みるなど、このような振舞いの例は数多くある」「悪意ある広範囲に亘る情報操作やサイバー攻撃にも露は責任がある」との声明を出した。
―英とポーランドはそれぞれ、駐在露大使を召喚。露のインテルファクス通信によると、露は対抗措置として、ポーランド外交官3人を露から退去させる意向。
―ザハロワ露外務省報道官は、「米の制裁に対する報復は避けられない」「米は露との関係を損ねた代償を払うことになる」「米の制裁は両国の利益に反する」「露は米の新たな制裁を背景に、サリバン駐露米大使を召喚した」「米大統領は露大統領に対して関係正常化の意図を伝えたが、米の行動は真逆だ」と述べた。
エリコの目
―中東では、ツイッターはSNS利用の中で依然主流であるが、過去5年間で徐々にその利用が、別のより新しいサービスに移る傾向がみられる。ドバイの「New Media Academy」社の報告によると世界で最もツイッター利用者の多い国20のうち、サウジアラビアが8位、エジプトが18位であった。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―国別感染状況(パレスチナ)
累計新規感染者数:274,690人(52,891人)、累積死者数:2,923人(563人)(カッコ内は人口百万人あたり)
14日の新規感染者数は1,923人、死者22人。一日あたり新規感染者数は8日に2,884人を記録、過去最大の流行を経験中。パレスチナ当局は3日より30日間、非常事態を延長。夜間(7時から翌朝6時)と週末(金、土)の商店等の閉鎖が続いている。婚礼、葬儀等の集会も禁止。ワクチンが行きわたり、行動制限が大幅に緩和してきているイスラエルと対照をなしている。(アナドール通信)
<特記事項・気付きの点>
―特になし