アルジャジーラの煽動報道

1600JST、アルジャジーラにチャンネルを合わせたところ、「もう軍隊は辞める」というシリア軍将校のインタビューをトップで取り扱っていた。「国民を守るべき立場の軍が、市民に銃口を向けるのはもうごめんだ。他の兵士にも脱走を勧める」というわけだ。どのように撮られたものかは不明のやらせ(*)映像を「exclusive」としてトップニュースにする・・・。およそわれわれの報道機関への期待とはほど遠い行為である。それは、単に客観性を失っている、というだけでない。その報道をすることがどのような効果をもたらすか、ということを知り尽くした上で、テレビ局を挙げてシリア当局の非人道的抑圧に対抗しているのだ。
私たちのこれまでのモノサシで言えば、せっかく客観、中立的報道、自由な報道スタイルを確立して世界の一流メディアに駆け上っていたのに、ジャーナリズムの禁じ手に次から次へと手を出し、三流メディアに転落してしまった、なんと惜しいことか、ということになる。
しかし、もうひとつ言えることは、今やメディアの世界はネットの登場で無法地帯となってしまった。その中で、アラブの民衆は、必死に「真実」、というより、「自分が真実と思うこと」を発信しようとしている。一方で、死の部隊を操る独裁者が国営メディアを通じて大うそをついているのであるから、兵士の本当の気持ちをすっぱ抜いて何が悪かろう、という論理を100%否定できるものでもない。
われわれ日本人としては、正義、市民生活の安寧、人権の保護といった観点から、事態を客観的に理解していくほかはないのだろう。結果として、アルジャジーラ以外のメディアを探すことになる。人々は、BBCだ、という。
アルジャジーラはBBCから出て一世を風靡したが、またBBCに戻るべきときが来たのだろうか。
(*注)インタビューに登場した将校の発言内容・意思まで疑うものではないが、通常、そのような映像は撮れないのであって、これを準備する上で、言及されていない様々な仕掛けがあることは自明だ。その仕掛けに言及せずして「ニュース」として扱うのはやらせ同然で始末が悪い。

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